Porsche - アンゲリク・ケルバー

アンゲリク・ケルバー

「911 にもう名前負けしてないわ」

天からの贈り物のような無垢なる 911。しかしそれは贈り物ではなく、アンゲリク・ケルバーが 2015 年の “ポルシェ・テニス・グランプリ・シュトゥットガルト” で優勝し、自らの手で勝ち取った栄冠だった。それから 1 年。全豪オープンでの見事なグランドスラム優勝から数週間たった現在、アンゲリクは純白の 911 カレラ 4 GTS カブリオレと共に歩んだテニス最高峰への道のりを懐かしそうに振り返る。

「鍵まで白いのよ」と声を弾ませながら当時アンゲリクは 911 のコックピットに乗り込んだ。その時点における白い 911 は成功の報酬、トーナメント優勝という大きな悦びのシンボルであったが、今、スーパースターとなったアンゲリクにとって 911 は体の一部と化している。

ごく自然に距離は縮まったとアンゲリクは言う。熱望の果てに何度となく夢に見た 911 は、アンゲリクにとっては旧知の間柄だったのだ。ポルシェが彼女をブランド・アンバサダーとして迎え入れたとき、彼女とポルシェの距離がさらに縮まった。「絢爛豪華なサウンド。そしていつもハートを揺さぶる性能なのです」と、印象を語るアンゲリク。彼女にとって、この白いポルシェはもはや家族同然の伴侶なのだろう。「911 のコクピットの中にいると、とても信頼されていると感じるの。常にサポートしてくれているみたいで安心できるわ」。

プロのアスリートであるアンゲリクは、911 のパフォーマンスについて、独特の評価をする。美学と先端技術、つまり “エステティックとハイテックのミックス” こそがザ・ポルシェ・ステートメントなのだと。「だからこのエルファーは、理屈抜きで私に似合っているでしょう?」とかわいく微笑む。そう、彼女は本当にこの 911 を愛している。「愛車を走らせた日は、まるでコート上での良い 1 日のようなのよ」とリラックスした表情で愛車を見つめる。心からクルマが好きなのだ。

去年のシュトゥットガルト大会で、メディアを完全にシャットアウトして開催された “パ ーキング・チャレンジ” という内輪のイベントでのこと。911 を狭い隙間にできるだけ短い時間で駐車するというシャレを効かせたパーティー・イベントだったのだが、果たして、歴戦のテニス・レディーたちの闘争心を呼び覚ますことに……。アンゲリクはこの  “器用さ比べ” においてポルシェ・ドライバーとして才能をいかんなく発揮し、2 位を大差で引き離してベスト・タイムを出したのだ。彼女はその少し後に行われたテニス・トーナメントの決勝も制して、大好きなポルシェをいつでも好きな時に味わえるようになった。夢が現実となった瞬間――そう、メルボルンのように。

Reiner Schloz
写真 Tibor Bozi