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タイトル防衛を目指すニューポルシェ919ハイブリッド世界耐久選手権(WEC)、LMP1

日本. ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.オリバー・ブルーメ)は、2016年の世界耐久選手権(WEC)を戦うニュー919ハイブリッドをフランスのポール・リカール・サーキットで開催される公式テスト「プロローグ」にて、初披露いたします。

ニュー919ハイブリッドのテクノロジーは、力強く進化しました。パワートレインはさらに効率に優れたものに、またエアロダイナミクスは様々なサーキットに適したものになり、各コンポーネントはいちだんと軽量化されました。LMP1担当副社長フリッツ・エンツィンガーは、「900PSを超えるパワフルなル・マン プロトタイプで、タイトルを防衛します」と述べています。

第3世代のポルシェ919ハイブリッドが進化したことは、外観が物語っています。デビューイヤーの2014年には、「ポルシェ インテリジェント パフォーマンス」という主張を裏付けるかのように、919のカラーリングはホワイトでした。2015年にはこのスローガンの最初の文字が残り、ル・マンでは3台がそれぞれホワイト、レッド、ブラックに彩られました。2016年のカラーリングは、この3つの色が混ざりあった新しいデザインとなります。

カーナンバーも新しくなります。2015年、ポルシェはル・マン24時間レースでワンツーフィニッシュを飾り、マニュファクチュアラーズ世界選手権タイトルを獲得しました。ティモ・ベルンハルト(ドイツ)、ブレンドン・ハートレー(ニュージーランド)、マーク・ウェバー(オーストラリア)がドライバーズタイトルを獲得し、今年はナンバー1をつけてレースに臨みます。ロマン・デュマ(フランス)、ニール・ジャニ(スイス)、マルク・リーブ(ドイツ)組はナンバー2を背負うことになります。

ニュー919ハイブリッドは多くの特長を誇ります。ポルシェは初めてWECのレギュレーションを全面的に活用し、各サーキットに最適となるように3種類のエアロダイナミクスパッケージを用意しました。4気筒ターボエンジンはさらに軽量化され、燃費も改善されました。ハイブリッド駆動の2つのエネルギー回生システムも効率が向上しています。2016年には、電気駆動のコンポーネントもさらにパワフルかつ効率的になりました。具体的には、フロントアクスルの最適化された電気モーター、パワーエレクトロニクス、社内で開発されたバッテリーの新世代リチウムイオンバッテリーセルなどです。また、新しいフロントアクスルによってセッティングの選択肢が増え、パートナーのミシュランとの熱心なタイヤの開発によってニュー919ハイブリッドの総合的なセッティングを高度化することができました。

2016年のポルシェ919ハイブリッドの詳細:
2016年のポルシェ919は、シャシーの基本的な構造は変わりません。2リッターV4ターボガソリンエンジンを用いたハイブリッド駆動コンセプトや、2種類のエネルギー回生システム(フロントアクスルからの制動エネルギーと排気エネルギー)も同様です。2014年シーズン当初から、ポルシェはこの大胆で的を射たコンセプトを実現してきました。ただし、最初のマシンは、特に重量に関して最適化の余地が残されていたため、2015年には新しいマシンが作られました。2016年にはそれほど大きな変更は必要なく、現在もこのコンセプトは安定したものとなっています。

ハイブリッドを後押しするWECのレギュレーション:
LMP1カテゴリーのレギュレーションにより、メーカーはハイブリッド駆動システムを使用し、パフォーマンスとエネルギー効率を直接リンクさせることが求められています。これは、回生システムから大量のエネルギーを利用できるようにすることを意味しますが、それに比例してラップあたりの許容される燃料量の削減も求められています。このために、各ラップで燃料消費量が計測されます。

WECでは、ハイブリッド駆動コンセプトに関してエンジニアに大きな自由度が認められています。ディーゼル/ガソリンエンジン、自然吸気/ターボエンジン、さまざまな排気量、またエネルギー回生システムは1種類か2種類かをチームは選ぶことができます。こうしたレギュレーションにより、将来的なプロダクションスポーツカーに大きく関連するイノベーションに焦点を当てることができます。これこそ、ポルシェがトップレベルのモータースポーツであるWECに復帰することに決めた主な理由です。

ダイレクトインジェクションのV4ターボ:
後輪を駆動する2リッターV4ターボガソリンエンジンは、ヴァイザッハの市販車の開発エンジニアとの密接な作業により、燃焼効率と混合気流がいっそう改善されました。また、90°V型エンジンはさらに重量がそぎ落とされました。昨シーズン、エンジンの最高出力は500PSをゆうに上回っていました。しかし、2016年のレギュレーションでは、ラップあたりの燃料から得られるエネルギー量の低減が定められており、プロトタイプ向けの最大限の燃料フローが低下しています。こうして、レギュレーションはLMP1のマシンがどんどん速くなるのを防ぎつつ、同時にますます少ない燃料からさらなる出力を発生できるようエンジニアの努力を促すものとなっています。919の場合、これにより燃料と出力が約8%低下しています。言い換えると、ル・マンでのラップあたりの燃料からのエネルギーが10メガジュール低下しています。これにより、1周13.629kmのル・マンでは、ラップタイムが4秒遅くなっています。この新しいレギュレーションにより、エンジンは500PSに低下しました。

2種類のエネルギー回生システム:
制動時にフロントアクスルで生成される運動エネルギーは、電気エネルギーに変換されます。2つめの回生システムは、エグゾーストパイプに組み込まれており、ここで排気ガスの流れはターボチャージャーと並行した2つめのタービンを駆動します。これは、もしこのタービンがなければ大気中に放出されていたはずの排気から余ったエネルギーを利用するものです。ここで採用されているVTG(=排気圧レベルに応じたタービン形状の可変制御)テクノロジーにより、エンジン低回転域、低圧時でもタービンが駆動されます。この追加のタービンは電気ジェネレーターに接続されており、生成された電気は、フロントアクスルでKERSにより生成された電気とともに、一時的にリチウムイオンバッテリーセルに蓄えられます。フルブースト時は、400PSを超えるパワーが上乗せされ、ドライバーはバックレストに押しつけられる強烈な加速に見舞われます。このパワーは電気モーターがフロントアクスルに加えるもので、これにより919は一時的に4輪駆動になり、システム出力は約900PSに達します。各サーキットごとに、チームはいつ、どれくらいの間、エネルギーを回生して呼び出すかという戦略を立てます。

エネルギーを蓄えるリチウムイオンバッテリー:
WECのレギュレーションでは、エネルギーを蓄える媒体に関しては、エンジニアに多くの裁量が認められています。当初は、ライバルたちはフライホイールとウルトラキャップ(電気化学的なスーパーキャパシタ)を使用していました。2016年には、全てのライバルがポルシェにならってリチウムイオンバッテリーを採用します。919ハイブリッドに関するもうひとつの重要な基本的決定は、800Vの高電圧を使用することでした。これは市販化に向けて開発中のコンセプトカー、ミッションEで採用しているものです。

WECのエネルギークラス:
レギュレーションでは、回生可能なエネルギーという点で、2~8メガジュール(MJ)の4段階が設定されています。これは1周13.629kmのル・マンに基づいて計算されており、他の8つのサーキットでは調整されます。ハイレベルな効率を示すエンジン、回生システム、エネルギー貯蔵システムにより、ポルシェは2015年には8 MJクラスを選択した最初の、また唯一のメーカーとなりました。この最高の回生カテゴリーでは、FIAフローメーター装置によってラップあたりの燃料量の上限が4.31ℓに制限されます。また、エンジニアは、エネルギー回生および貯蔵システムを強力なものにすると、大型化して重量が増加する傾向があることも考慮に入れる必要があります。

ル・マン1ラップ(13.629 km)あたりのエネルギー/燃料使用の規則*:
2メガジュールの回生エネルギー = 4.70リッターガソリン = 3.70リッターディーゼル
4メガジュールの回生エネルギー = 4.54リッターガソリン = 3.58リッターディーゼル
6メガジュールの回生エネルギー = 4.38リッターガソリン = 3.47リッターディーゼル
8メガジュールの回生エネルギー = 4.31リッターガソリン = 3.33リッターディーゼル
*2016年1月1日からル・マン2016まで有効

安全性に余裕のある定評あるシャシー:
ポルシェ919ハイブリッドのモノコックは、F1マシンと同様、シングルユニットとして製造されるカーボンファイバーサンドイッチ構造となっています。モノコック、エンジン、トランスミッションをひとつのユニットとすることで、最適な剛性が得られます。V4エンジンはシャシー内で耐荷重機能を果たし、アルミニウム製の油圧作動式シーケンシャル7速レーシングトランスミッションはカーボン構造内にマウントされています。構造的には、2016年もトランスミッションとトランスミッションマウントは同じままです。トランスミッションの開発にあたって焦点となったのは、軽量化でした。

新しいフロントアクスル、強力なタイヤの開発:
さらに優れたドライビングダイナミクス、バランス、トラクション、グリップ、セッティングの幅が得られるよう、2016年のポルシェ919ハイブリッドには新しいフロントアクスルが採用され、リアアクスルも最適化されました。2月の徹底的なテスト後、ミシュランタイヤのパフォーマンス向上も期待されます。

あらゆるサーキットで高効率のエアロダイナミクス:
2016年、エアロダイナミクス改善のため、ポルシェは初めて3種類のパッケージを採用することにしました。今までは、ポルシェは世界耐久選手権のシーズン開幕戦では妥協し、シルバーストーンサーキットで最適となるよりも小さなダウンフォースで919をエントリーさせていました。これは、シーズンハイライトとなるル・マンを重視していたためでした。ル・マンには長いストレートがあるため、空気抵抗を非常に低く、ダウンフォースを最小限にとどめる必要があります。2016年のシーズン開幕戦に、919ハイブリッドはハイダウンフォースパッケージで臨みます。ル・マンには極度に低いダウンフォース設定で臨み、続く6つのWECレースにはもうひとつのハイダウンフォースパッケージで参戦する予定です。レギュレーションにより、エアロダイナミクス設定が年間3つを超えることは禁止されています。

エアロダイナミクスの変更は、異なる走行状況でのハンドリング安定性のさらなる向上と効率の向上を追求した結果です。横風などの影響、コーナリング時のバランスの変化、ヨー角やロール角が一段と低減されています。

2016/3/24