ボディと軽量パーツ

車両のボディに完璧に調和することは、ポルシェの品質基準における重要な要件のひとつです。セカンドスキンでさえ、オーダーメイドのようにフィットしなければなりません。それは、ミリ単位の精度が要求されます。

ポルシェ クラシックの専門家は広範囲にわたる一連の測定によって、ポルシェ 911(モデルイヤー1965-1994)のフェンダーやサイドボディの品質を大幅に向上させました。また1972年と1973年に1,580台のみが生産された伝説の911カレラRS 2.7の薄板パーツも実現し、初めて再販されることが可能になったのです。

ポルシェ クラシックは、寸法精度を持続的に改善して車両への取り付けをより容易にするため、各製造段階を全て始めから見直しました。オリジナルの製造工具は再設計および最適化され、寸法精度の検証には新しいテスト装置が使用されています。例えば約30種類のフェンダーが、それぞれ車両またはテスト装置に取り付けて試されました。さらに各工程段階は、表面仕上げで活用される精巧なクラフトマンシップを含め、一貫した品質を保証するために文書化されています。

コレクターズカーの価値を維持するため、ポルシェ クラシックは真の意味での明確なサインを与えています。再販されるポルシェ クラシック純正パーツは、ポルシェのロゴによってすぐに見分けることができます。

ボディパーツの製造

深絞り

ボディパーツをシートメタルから成形するには、強さと精確性が要求されます。専門家が使用する金型も見事です。金型は全長約2.4m、幅1.6m以上、高さ1.7m、そして重量は14トン。シートメタルは下型と押さえ装置にクランプされ、パンチで絞られます。次に最大800トンのプレス機で圧縮され、基本の形状に仕上げられます。

切断

1回のみの切断では、基本の形状から余分な素材を分離するには不十分です。金型は正確な切断を行うために、4回の位置変更を要し、フェンダー部分では穴あけ加工のために再度固定が必要になります。その後、折り曲げと型抜きのためにさらに3回の作業プロセスを実施。フェンダー部は機械加工前の工程で、深絞りを含めて最大10の工程段階が取り入れられます。

溶接

フェンダー製造の熱間作業はここから始まります。専門家がフェンダーのフロントセクションとメインセクションをあわせて専用の装備に取り付けます。ガス溶接の間、温度は3,200°Cまで達し、安定した溶接シームによって強固に接合されます。

溶接シームの粗磨き

溶接シームのむらは全て取り除かなければなりません。フラットで均一な表面を実現するため、最初にサンダーを使用しシームに粗磨きを施します。

溶接シームの仕上げ

溶接シームの仕上げには安定した手技と熟練の視点が必要です。シーム上にへこみがある場合、特殊なツールを使用して補正し、さらにボディプレーンを用いて表面が均一になるように仕上げますが、塗装が可能になるまでにはさらなる工程が必要です。

表面仕上げ

研磨を徹底して繰り返す。塗装可能な表面に仕上げるためには、サンドペーパーの目を徐々に細かくしながら、研磨を4回から5回行う必要があります。

追加パーツの製造

フェンダーが成形される間、別の専門家は必要な追加パーツの作業に取り組んでいいます。バージョンによっては、ひとつのフェンダーの構成パーツが最大60個におよぶ場合もあります。最も重要なのは、ヘッドライトケース、タンクトレイ、そしてフィラープレートです。

組み立て

最終工程では、専用の機器とツールを使用して主要な追加パーツが取り付けられ、フェンダーが完成します。専門家は、特殊な技を必要とする伝統的な方法で組み立てを実施。スポット溶接から、メタルアクティブガス(MAG)溶接やろう付けまで、技術者はそれぞれの追加パーツに適したさまざまな技術を用いて作業を行います。タンクトレイが装備され、“純正保証”“メイド・イン・ジャーマニー”のメッセージを明確に示すポルシェ ロゴが付けられると、エクスクルーシブなクラフトマンシップは完成となります。これによって、フェンダー全体を車両に取り付けるための準備が整います。

軽量パーツの製造

標準パーツの切断工程

RS特有のリアのフレア部分を生み出すためには、薄板パーツを基本のサイドボディの形状に切断することが必要です。これらは、全て手作業によって行われます。スペシャリストはサイドボディをツールに位置決めし、テンプレートを使用して切断点をマーキングおよびスケッチします。マーキングされた部分は、ボディソーを用いて切断されます。

位置決め

接合の準備として、機械加工された薄板パーツと張り出したホイールアーチはツール上で正確に位置決めされ、マグネットを使って固定されます。

サイドボディと張り出したホイールアーチの接合

固定されたパーツは、タングステン不活性ガス(TIG)溶接を使用して接合されます。溶接工は最初に接合する点を大きな間隔で設定し、溶接の間の距離が5~7mmになるまで隙間を埋めていきます。その後、両方のパーツを連続的に溶接。新しいサイドボディは特殊なツールを使用して、ミリ単位の精度で測定されます。

仕上げ

ここからの製造工程では、繊細さが極めて重要になります。薄いシートメタルはどんな傷でも目立つため、溶接シームは手による仕上げが必要で緻密な職人技が要求されます。最初に、専門家は特殊なツールを使ってシームのへこみを慎重に補正し、次にボディプレーンを用いてシームを徐々に仕上げます。塗装が可能な表面を作り上げるためには、サンドペーパーの目を徐々に細かくしながら数回の研磨作業を行うことが必要です。

スタンプ

911カレラRS 2.7の薄板サイドボディの製造には、高い品質を証明するにふさわしい熟練の技が集約されています。ポルシェのロゴが軽量ハウジングフレームに追加され、“純正保証”“メイド・イン・ジャーマニー”のメッセージを明示します。